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H・T(PN:都鳥流星)

混沌の中から、生まれた文化。
——創業期から見てきた“変化と一貫性”

H・T(PN:T流星)がまぐまぐに入社したのは2015年。メルマガ業界ではすでに「オワコン」という言葉が聞こえ始めていた時代だった。それでも入社を決めた理由は、意外にもシンプルだったという。混沌とした時代も、理不尽な局面もあった。それでも、その中で「否定しない」「やってみる」「人を信じる」という目に見えにくい文化が、確かに積み重なってきた。創業期から会社を知るメンバーの視点で、まぐまぐの”時間軸”を辿る。

1
昭和の空気の中で始まった日々
—— 入社当時のまぐまぐという会社

「残業も当たり前にあって、いまと比べ物にならないくらい”ハード”な環境だったと思います。」

H・T(以下、T)がまぐまぐに入社したのは2015年。
メルマガ業界ではすでに「オワコン」という言葉が聞こえ始めていた時代だった。
それでも入社を決めた理由は、意外にもシンプルだったという。

「地震情報のメルマガを個人的に購読していて、”あ、これってまぐまぐだよな”と、すでにサービスとして知っていたんです。メルマガの老舗で、基盤はちゃんとしている。少なくとも、一瞬で消える会社ではないだろうなと思いました。」

入社後に任されたのは、MAG2 NEWSのデスク業務。
記事選定、チェック、公開、公式メルマガの制作・配信、外部ライターへの発注まで、サイト運営に関わる業務のほとんどを担っていた。

「いま思えば、一人でサイトを回していたような状態ですね。当時の上司はよくもわるくも放任主義な感じだったので(笑)。」

“聞いていた話と違った”と感じる瞬間も少なくなかった。
決まったルールや整理された仕組みがあるわけではなく、当時求められていたのは結果と数字だけ。
休みも十分に取れず、「とにかくやり切る」という根性論に近い中で仕事をしていた。

それでも、Tは辞めなかった。
理由は、単純に「楽しかったから」でも、「恵まれていたから」でもない。

「大変でしたけど、”この会社、やり方さえ間違えなければ、まだ伸びるな”という感覚が、どこかにずっとあったんです。」

2
限界と直談判
—— 「このままではまずい」と感じた瞬間

転機は、2019年末に訪れた。
当時、数字管理を担っていたメンバーが退職し、その役割を新しく入った編集部の社員に、そのまま引き継ぐ流れがあった。

「正直、”これは違う”と思いました。業務量も責任も重すぎるし、何より、その人の成長を本気で考えていないように見えたんです。」

「このまま見過ごしたら、人が育たない会社になるのではないかと思いました。」

Tが選んだ行動は、当時の役員3名への直談判だった。

「正直、怖かったですよ。でも、もう腹を括るしかなかった。”これを言ってダメなら、もう終わりでもいい”それくらいの覚悟でした。」

結果として、その直談判は通った。
現場の声は受け止められ、「会社の成長と社員の成長を両輪で考える運営」が前進し始めた。

「今振り返ると、あれが一つの”山”だったと思います。あの山を越えられたことで、”もうどんな山でも越えられるな”という感覚を持てた。」

この経験は、Tにとって大きな転機となった。
会社という組織が、間違った方向に進んでいると感じたとき、声を上げることで、流れを変えられる可能性がある。経営陣が社員のことをしっかりと考えてくれる。
その実感が、この先もまぐまぐに残り続ける理由になっていく。

3
変わったもの、変わらないもの
—— 上場を経て見えた”文化の正体”

—— 長く在籍する中で、会社として「変わった」と感じる点はどこでしょうか。

一番分かりやすいのは、やっぱり上場ですね。
環境としては、標準化や組織化が進み持続的な成長へと歩みを進めることができました。
以前は、「回っていればOK」「数字さえ出ていればOK」という空気が強かったと思います。
今は、労務面も含めて整備が進み、無理が前提の働き方ではなくなりました。

—— それは、大きな変化ですね。

そうですね。
一方で、変わっていない部分も、あります。

—— 例えば、どんなところでしょうか。

「良い意味でトップダウン」なところですね。
もちろん、全てがトップダウンなわけではありませんが、まぐまぐは、もともとスピード感を重視してきた会社です。
全部をオープンにして、全員の合意を取ってから進める、というやり方には向いていない側面もあります。
だからこそ、「誰が決めているのか」「その判断にまぐまぐらしさがあるのか」ここが大事なんだと思っています。

—— 「まぐまぐらしさ」を感じる瞬間はありますか?

新しさを、否定しないところですね。
正直、昔はそのせいでカオスなシーンが多々ありましたが、「とりあえずやってみよう」という空気は今のまぐまぐにとっては大きな力になっています。
僕自身も、シティポップの記事を5年かけて取材して、CDやレコード、配信にまでつながった。
当時、「そんなに時間かけて意味あるの?」と言われてもおかしくなかったと思います。
それでも、ちゃんと話をすれば、最終的には背中を押してくれる人がいた。

—— その経験は、Purposeともつながりますね。

はい。
Purpose『Empower Your Dreams』を聞いたとき、真っ先に思い浮かんだのが、そのシティポップの取材でした。
「やりたい」と言ったことを、否定されなかった。
簡単ではなかったけど、”夢中になれることを続けさせてもらえた”。
それが、結果として価値になった。
形は変わっても、その本質は、まぐまぐの中にずっとあると思っています。

4
いまは「生まれ変わるとき」
—— Tさんから見て、今のまぐまぐはどんなフェーズにあると思いますか?

一言で言うと、「新たに生まれ変わるとき」だと思っています。

—— それは、どういう意味でしょうか。

これまでは、老舗であることや、過去の実績に、どこか甘えていた部分もあったと思います。
でも今は、それだけでは生き残れない状況になっている。
AIが身近になって、仕事のやり方も、スピードも、まったく変わってきました。
昔は、とにかく人力で、時間をかけてやるしかなかった。
今は、やり方次第で、同じ成果をもっと楽に、速く出せる。

—— 最近入社したメンバーを見て、どう感じますか?

正直、羨ましいですね(笑)。
環境としては、昔よりずっと整っていますし、ツールも揃っている。
一方で、「仲が良い」という点は、昔も今も変わらない。

—— 古参メンバーに求められる役割は何だと思いますか?

判断力と嗅覚ですね。
何が危険で、何がチャンスか。
過去の失敗も成功も見てきた立場だからこそ、「これは一度立ち止まった方がいい」「これは行った方がいい」その勘所を伝えていく必要がある。

—— 今のまぐまぐに合う人はどんな人だと思いますか?

派手なことをやりたい人より、こつこつ積み上げられる人。
そして、事業の可能性を本気で信じられる人。
メルマガにしても、他が淘汰されても、最後まで残る強さがここにはある。
老舗のプライドが、これからもう一度輝くフェーズに入っている。
僕は、本気でそう思っています。

5
これからの世代に伝えたいこと
—— これからまぐまぐに入ってくる人たちへ、社歴の長い立場だからこそ伝えたいことはありますか?

まず伝えたいのは、「メルマガはオワコンじゃない」ということですね。
正直、入社した当時から「もう終わったメディアだ」と言われ続けてきました。
それでも、今もこうして続いている。

—— なぜ、続いていると思いますか?

メルマガは、”人と人が直接つながる”ツールだからだと思います。
アルゴリズムに左右されない。
誰かの想いが、ちゃんと届く。
これは、どんな時代になっても、簡単には代替されない価値だと思っています。

—— これから入る人にとって、不安はありませんか?

もちろんあると思います。
老舗ですし、歴史も長い。
でも、その分、「まだ完成していない」会社でもあります。
今のまぐまぐは、用意された正解の上をなぞる場所ではない。

—— どういうスタンスの人が合うと思いますか?

こつこつやれる人ですね。
派手な成果を一気に出すより、目の前の仕事を積み上げていける人。
そして、「これ、おかしくないですか?」
「こうしたら、もっと良くなるんじゃないですか?」
そう言える人。

—— 長く働いてきて、「続けてきてよかった」と感じる瞬間は?

社員の可能性を、ちゃんと信じてくれるところです。
厳しい時期もありましたが、完全に切り捨てられるのではなく、「どうすれば活かせるか」をともに考えてくれる人がいた。
だからこそ、ここまで続けてこられた。

—— 最後に、まぐまぐの未来をどう見ていますか?

他が淘汰されても、まぐまぐは最後まで残ると思っています。
老舗のプライドが、これからもう一度、輝き出す。
今は、その助走期間。
本当に生まれ変わる瞬間を、これから入ってくる人たちと一緒に迎えられたら、それはすごく面白いことだと思っています。

6
編集後記
インタビューアー堂前 晋平:
Tさんの話を通して浮かび上がってきたのは、まぐまぐという会社が、決して一直線に成長してきたわけではない、という事実でした。
混沌とした時代も、理不尽な局面もあった。
それでも、その中で「否定しない」「やってみる」「人を信じる」という目に見えにくい文化が、確かに積み重なってきた。
今回のインタビューは、創業期から会社を知るメンバーの視点で、まぐまぐの”時間軸”を辿る試みでした。

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